研究紹介

  私の研究室では、中性子星やブラックホールなどのコンパクト星について研究を行ってい
ます。特に、連星中性子星やブラックホール−中性子星連星といった、コンパクト星で構成
された連星系について、準定常段階から合体に至るまでの進化過程を一般相対論を用いて研
究しています。
  これらの連星系は、重力波を放出することでエネルギーと角運動量を失い、徐々に連星間
距離を縮めていき、最後には合体します。特にその中で宇宙年齢以内に合体するものは、現
在稼働中の、地上に建設された重力波観測用レーザー干渉計の重要なターゲットの一つでも
ある上、合体後に形成される天体(ブラックホールとそれを取り巻く降着円板)は継続時間
が短いガンマ線バーストの放出源の候補の一つでもあり、興味の尽きない研究対象でありま
す。
  コンパクト連星は、ブラックホールや中性子星という非常に重力の強い天体で構成されて
いるので、一般相対論を用いて研究しなくてはなりません。また中性子星が関わっている場
合、合体直前には流体の効果も効いてくるので、相対論的流体力学の方程式も一緒に解く必
要があります。従って複雑な方程式系を解くことになり、数値計算を手段として研究するこ
とになります。
  連星系の合体現象を数値的に解くと聞くと数値シミュレーションを想像するかと思います
が、私の研究室では今のところ行っていません。私の研究室で扱っているのは、その様なシ
ミュレーションの初期データにあたる準平衡解(形状)を求めるという研究です。シミュレ
ーションを実行する場合には初期データが必要になりますが、一般相対論では勝手に与える
ことはできず、アインシュタイン方程式の拘束条件式を満す解でなくてはなりません。また、
できる限り現実的な状況を再現した初期データである必要もあるので、連星間距離が十分離
れたところから合体直前に至るまでの物理過程を詳しく調べ、理解する必要もあります。そ
の様な、動的合体直前の準定常段階での物理過程を解明することを目指し、日々研究を行っ
ています。また、日本国内や海外のいくつかの数値シミュレーショングループへ初期データ
を提供し、共同研究を行っています。

conformal factor




非等質量連星中性子星の、XY平面上で
のconformal factorの値とその等高線。
青い円は、二つの中性子星の表面の位
置に於ける値を表しています。

図は、左の中性子星が軽く右の中性子
星が重い場合です。重い星の方が重力
場が強く、conformal factorの値も大
きくなっていることが分ります。



Last modified: 2011年4月14日