一般に化石の研究は、形態に基づき対比・分類される。しかし、エディアカラ紀〜カンブリア紀の後生動物黎明期の化石は現生の生物とは対比不可能な奇妙な形態のものが多く産する。さらに、現生の動物門の組成といえども、現存するものとは異なる形態を持つものが多い。さらには、機能や生体分子などは存在しているが、発現していなかったといったことも考えられる(分子時計と化石の証拠のずれの原因の一つ)。そのため、形態だけでなく、他の手法を組み合わせる必要性がある。
そこで、私たちは化学組成を用いた古生物学研究を創成することを試みている。
従来の形態による研究と化学組成に基づく研究を組み合わせた
新しい古生物学的研究を化学古生物学
と呼ぶ。
南中国は化石の宝庫。まだまだ、発見されていない化石がいっぱいあるはず。最古の刺胞動物、海綿動物、動物胚化石などはここで発見されている。
炭素同位体やFT-IRなど、従来の形態観察に加えて、化学組成で化石を分類。この時代の生物は異常なたちのものが多いので、形態に加えて化学組成(生体機構に由来)での分類は必須なはず。
金属元素の同位体や化学組成分布を使って、生体機構を同定する。
Ca同位体を用いると、その生物がCaのbiomineralizationをしていたかどうかがわかる。
さらには、食物連鎖レベルも。
生体有機分子を使って、生物種を特定
ゴールは最古のDNAの検出。
(4) 動物卵や胚の微量元素のマッピング
現生サンゴの卵、胚や幼生の微量元素のマッピングを行っている。
いくつか、特徴的な化学組成分布が見えてきた。
①一般に植物などで、細胞壁や膜に濃集するとされるホウ素は動物卵や胚ではそのような特徴はなく、一様に分布する。また、骨格に必要と思われるCaもそうであった。
②Mg, Zn, Pは周縁部と中央にそれぞれ分布した。
③Fe, Cuは周縁部の片側に特に濃集した(ミトコンドリアなどの分布?)。
④Ba, Sr, Pbは膜に特に濃集した。
⑤炭酸塩による損失の程度の高いあまり保存状態の良いとは言えない化石の微量元素マッピングを行った。炭酸塩には多くの高濃度で含まれていたが、燐酸塩部の有機物の多いところに着目すると(右から二番目)、膜に濃集するZnやBaで同様な傾向が見れた。
この物質が化石である。さらには動物胚由来であることを示す。
〜動物種ごとに化学組成が異なるかの検証と化石への応用へ〜
(5) その他