第5回宇宙地球惑星科学フォーラムのお知らせ
【第5回宇宙地球惑星科学フォーラム】
- 日時:4/18(金) 15:10-16:40
- 場所:アドラボ棟-#410
- 講演者:上野 雄一郎(東京科学大学 理学院 地球惑星科学系 教授)
- 題目:CO world: Early Earth, Early Mars and Beyond
- 要旨:上野はこれまで初期地球の環境を安定同位体を用いて解読してきた。その結果、無酸素状態の地球初期大気にはCO2だけでなく一酸化炭素COが含まれていたことを明らかにしてきた。そのような環境は初期の火星でも同様であり、大気中でCOから有機分子が作られる環境(CO world)にあったと考えている。これはNASA Curiosity Roverの発見した火星有機物が極度に13Cに枯渇する同位体異常を持つ一方で火星大気CO2はむしろ13Cに富むという特徴の原因として有力である。こうした火星や地球の初期環境を踏まえると、次の課題は、当然そこからどのような有機分子が生成するのか、またさらにそこから生命は誕生するのか?という問題が重要となる。講演ではCOと水に太陽光の紫外線があたるだけで、アミノ酸、糖、核酸塩基、膜を作る脂肪酸、中心代謝の伴物質となる有機酸など生命のbuilding blockとなる分子のほとんどが合成されることを示す。従来の生命起源研究においては、主にアミノ酸、糖、核酸塩基の無機的合成を実証することを主眼に研究が行われ、またRNAのような自己複製可能な分子がどのように組立てられるのかが問われてきた。しかし、仮にそれら分子が全て揃った「原始スープ」ができても、それだけで自己複製のプロセスは始まらない。生命がどうやって発生したのか知りたければ、「自己複製」はどうやったら始まるのかを明らかにしなければならない。そこで我々CO world研究グループでは、初期地球環境中でCO/N2Oルート(あるいはNCHO/NH3ルート)からアミノ酸が合成される実験事実に基づき、それら特定アミノ酸/有機酸(あるいはそのポリマー)が、共に合成される他の分子と環境の物理化学条件に支えられ、それ自身を増幅する化学系(protometablism)に発展し、「複製」を通した「自己」の獲得に至るとする仮説を実験的に検証している。