1.1 気球望遠鏡

我々は、本計画の為に、新しい気球望遠鏡を開発した。 観測装置の概要を、図1及び表1に示す。

望遠鏡主鏡は、口径 50 cm を有し、波長 100-200 の遠赤外線に 対して、1'-2'の空間分解能を達成する。

主鏡は軸外し放物面鏡であり、且つその主焦点に検出器を置く事により、望遠 鏡自身からの赤外線輻射を最小限に抑え(輻射能率10%以下)、検出感度の向上 を図る。

望遠鏡の姿勢制御は、高度-方位制御により行なう。 ゴンドラ全体を回転させることにより方位角を、ゴンドラの中で望遠鏡を回転させることにより高度角を、それぞれコントロールする。

ゴンドラの回転角の検出は、3軸光ファイバージャイロを用いて行なう。 検出した回転角をオンボードCPUにより処理し、その結果をリアクションホイールに伝え、回転角の制御を行なう。 この姿勢制御系は、安定精度10''角程度の、高い制御能力を有している。 またオンボードプログラムの書き換えのみにより、幅広い姿勢制御パラメータ を実現でき、従って様々な検出機器を搭載しての観測に適用可能である。

以上気球望遠鏡の詳細については、参考文献[1][2][3]を参照されたい。

  
Figure 1: 日本製気球望遠鏡全体像。軸外し光学系を用いた望遠鏡により、天体からの赤外線を、真空容器(Cryostat)中に収めた赤外線検出器へと導く。望遠鏡の方位角は、光ファイバージャイロで検知し、ゴンドラ下部に取り付けたリアクションホイールで制御する。一方高度角は、ゴンドラ内で望遠鏡の仰角を変更する事により制御する。

 

 

観測装置外寸 1.8 m × 1.6 m × 3.0 m (縦×横×高さ)
観測装置総重量 440 kg (バラスト含まず)
望遠鏡口径 50 cm (軸外し光学系)
姿勢制御方式 デジタルPID制御 (安定精度±10''角程度)
検出器 Stressed Ge:Ga 4×4素子2次元アレー
(真空容器中で、液体ヘリウムにより冷却)
空間分解能 1.5' ×1.5' (1ピクセル当り)
観測のねらい 銀河系内星間物質の広域観測
系外銀河の星形成活動の観測
観測対象 160 μm 連続波:低温ダストの温度、質量決定
検出限界 10 Jy 程度 (1秒積分、1σ)
観測範囲 20平方度/時間程度の掃天が可能
Table 1: 日本製気球望遠鏡の概要


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