2.1 2次元電子系による遠赤外線吸収

量子ドット形成に用いられる、AlGaAs/GaAs結晶のエネルギーバンド構造を図1(a)に示す。

 

 


Figure 1: AlGaAs/GaAs結晶のエネルギーバンド構造。文献[2]より引用。

この結晶はGaAs半導体結晶上にAlxGa1-xAs結晶を成長させたものであり(変調ドープ)、その界面に於てエネルギーバンドが不連続に変化している。 AlGaAs結晶成長の際にドナーを導入すると、ドナー電子の一部が、エネルギーレベルのより低いGaAs内部に拡散する。 この結果GaAs側が負に帯電し、その電場により拡散電子は界面付近の極狭い領域に閉じ込められる(図1(b))。 この領域の厚みはおよそ10 nm と電子のド・ブロイ波長にほぼ等しく、従って電子は界面に沿った2次元の領域に束縛される。 これを2次元電子系と呼ぶ。

この2次元電子系に垂直に磁場を印加し、更に遠赤外線を照射すると、電子のサイクロトロン周波数に対応した周波数のフォトンが選択的に吸収される[3]。 吸収の周波数幅は、2次元電子系中の半導体格子欠陥、不純物散乱の程度に依るが、およそ1 cm-1の程度である[3]。

検出周波数がサイクロトロン周波数に依る為、印加する磁場強度の調整により、検出波長の選択が可能である。

また2次元電子系の電子密度が電子の有効質量に影響する事から、電子密度を調整する事によっても、検出波長の選択が可能である。 これにはドナーの密度を変更する方法と、GaAs結晶にバックゲート電圧を加える方法とが考えられる。

すなわち2次元電子系を用いた検出器は、検出波長の選択が可能であり、また波長分解能R〜100を有するという特徴を持つ。

選択可能な波長範囲は、磁場強度、温度等に依存する。 小宮山ら[1]は、波長185 -210 の範囲の遠赤外線検出が可能である事を示した。 現実にどの程度の波長範囲が検出可能かは未だ不明であるが、少なくとも100 -400 程度の波長範囲の検出は可能であると推測される[4]。


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