望遠鏡光学系の概念図を、図2に示す。 望遠鏡主鏡は、口径50cmのオフセット放物面鏡である。 この主鏡で天体からの遠赤外光を反射、集光し、円筒状の冷却容器へ導く。 冷却容器中は液体ヘリウムで絶対温度2Kまで冷却され、その中に前述の赤外線検出器を収める。
赤外線望遠鏡は、望遠鏡自身が赤外線(熱輻射)の輻射源であるため、この熱輻射の検出器への漏れ込みをいかに防ぐかが、観測装置全体の性能を決める重要な要素である。 この為オフセット鏡を用いる事により、ステー等の構造物が光路中に存在しない様にし、構造物からの熱輻射の影響を防いでいる。 また主鏡からの反射光を直接冷却容器に導く事により、通常の望遠鏡で用いる副鏡を用いていない。 これは鏡自身も、微弱ではあるが熱輻射源である為で、鏡の枚数を通常の2枚 1枚に減らし、ここでも熱輻射を最小限に抑えている。 更に、主鏡周囲には、図に示す様にアルミ製の薄板で囲い、回折による主鏡周辺からの熱輻射の漏れ込みをも遮断する。
図2中、主鏡と冷却容器を支え、これらをつなぐ構造材には、CFRPを採用している。 これは、構造材の熱収縮による望遠鏡の像のボケを防ぐ為である。 熱収縮率の小さいCFRP材の採用により、上空の低温度環境下での観測中にも、地上と同様の像が保証される。 更にCFRPは、望遠鏡全体の軽量化にも、大きな役割を果たす。
Figure 2: 望遠鏡光学系概念図。口径50cmのオフセット放物面鏡(図中左上)により反射した遠赤外光を、検出器を収めた冷却容器(図中右下)へと直接導く。光路中には、赤外線源となるステー等の構造物が存在しない。