3 姿勢制御

望遠鏡の姿勢制御は、次ページの通りまとめられる。

姿勢制御方式

望遠鏡の方向は、高度-方位制御により制御する。 ゴンドラ全体を回転させることにより方位角を、ゴンドラの中で望遠鏡を回転させることにより高度角を、それぞれコントロールする。

方位角の制御は、以下の手順で行う。 まずゴンドラの回転角、回転角速度をジャイロ(オプティカルファイバージャイロ)により検出する。 ジャイロからの出力は、デジタル信号である。 これを搭載回路中のCPUに取り込み、回転モーメンタムを発生するリアクションホイールに必要な回転速度を計算し、その結果をD/A変換して、リアクションホイールを駆動するアンプに与える(デジタル制御)。

この制御の試験結果のデータを、図3に示す。

この例では、最終的には誤差1分角程度の、非常に安定した制御を実現している。

更に制御をデジタルベースで行うことにより、例えばゴンドラの回転モーメンタムの変更にも、プログラムの書き換えだけで即座に対応することが可能である。 また新しい観測モード(ポインティングやマイクロスキャン等)も自由に取り入れ、様々な観測に適応する事が可能である。 即ち、この制御系は、非常に汎用性の高いシステムであり、今回の我々の観測に限らない、様々な観測装置への適用が可能であると考える。

制御されたゴンドラの姿勢の決定には、上述のジャイロを3台用い、3軸回りの回転角を決定する。 これに加え、CCDを用いたスターカメラのデータにより、ジャイロで決定した角度(相対値)の絶対値を較正し、更にはジャイロのドリフトに伴う決定誤差の補正を行う。

  
Figure: 姿勢制御試験の一例。制御中に方位角の目標値を1〜5の範囲で変更した際、制御が追い付くまでの様子を示す。縦軸のゴンドラ方位角の相対値は、ゴンドラに搭載したジャイロ(本文参照)で測定した。この例では、およそ20秒の後にゴンドラは新たな目標角に到達し、最終的には誤差1分角程度で安定した制御を実現している事が分かる(縦軸がログスケールである点に注意)。 尚、安定後の方位角の平均値が0とならないのは、方位角信号に一定のオフセットを与える事により、定常時に於いてもリアクションホイールを定速で回転させる、いわゆるバイアスモーメンタム制御を行っている為である。


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